ダイビング歴43年水中写真家・大方洋二の魚って不思議!

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がんばるオジサン

沖縄本島の本部半島沖に、水納島という小さな島がある。クロワッサンの形に似た島なので、クロワッサンアイランドとも呼ばれている。ダイビングサービスが1軒あり、その名も「クロワッサンアイランド」という。オーナー夫妻はよく知っているので、何度か訪れている。
二度目に訪れたときだから、12年前の7月のこと。何かの産卵を撮影したくて、無理を言って夕方にボートを出してもらった。夕方だったので、近くの防波堤のそばの名もなきポイントに行った。6時少し前にエントリーしたら、オジサンが群れをなしてものすごい勢いで泳ぎ回っている。

大部分がメスで、数尾のオスが追いかけていたのだ。オスはところどころ紫色に変え、婚姻色になっている。明らかに求愛だ。
追いかけっこがしばらく続き、そのうちメスの群れがバラけてきた。オスにとってはそのほうが絞りやすいようで、メスを追いかけながら、あるいは目の前に飛び出してヒゲを前方に突き出す。これがオスのプロポーズなのだ。しかし最初のうちメスは無関心を装っている。振られてもオスは何度もアタックする。
このようなことが何度か繰り返され、オスが中層に浮かんで体を震わせて誘うと、メスが浮かんで行って並んで急上昇して放卵・放精する。だが、このようにうまくいくのは稀で、別のオスが邪魔に入って中断したり、撮影のため近づくとやめてしまうことが多い。とにかくオジサンはエネルギッシュだったので、ボートに戻ってから「オジサン頑張ってたねぇ!」とみんなに同意を求めた。次に水納島を訪れたとき、その思い出深いところは「がんばるオジサン」というポイント名になっていた。


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プロフィール

大方洋二
大方洋二○1942年 東京生まれ
高校時代にスノーケリングを始め、21歳にときに東亜潜水機(株)でスクーバダイビングの講習を受ける。同時に発売されたばかりのニコノスを手に入れ、独学で水中撮影を始める。
以来、会社勤めをしながら趣味として続け、39歳で退社してフリーの水中写真家になり、現在に至る。NHKの動物番組のコーディネーターも時折務める。日本自然科学写真協会会員。

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