鯛島の伝説
青森県下北半島の脇野沢村に、鯛島という小さな島がある。魚が浮かんでいるように見えることからこの名が付いた。鯛島の周りは海中公園地区になっていて、以前取材したことがある。
ボートで島の近くに行って潜るのだが、時間が限られている中、海中景観と生物を撮影しなければならない。魚は少なく、目についたのはアイナメとリュウグウハゼくらいだろうか。磯やけという海藻がなくなる現象だったが、場所によっては生い茂っていた。
陸の撮影もあったので、午後からは車で見晴らしの良い所に行って景色を撮った。そこには標示板があって、この地の伝説が書かれていた。
802年、征夷大将軍坂上田村麻呂が蝦夷征伐のため当地に半年あまり滞在したおり、将軍に仕えていた美しい村の娘と恋をしてはらませ、置き去りにして都に帰ってしまった。娘は将軍恋しと日夜泣き続け、ついに泣き狂い、三つ子を生むと自らの命を絶ってしまう。哀れに思った村人は、少しでも都に近い鯛島に葬った。
以後、島の近くでは船の難破など怪奇な事件が相次いだため、娘のたたりだと人々は恐れた。現在でも島のワカメは娘の髪の毛だと言い伝えられ、ワカメを採ると急に海が荒れると、今でも採ることを嫌っているとか。
この伝説を知ったのは、潜り終えてから。知っていたなら、撮影どころではなかったかもしれない。