ダイビング歴43年水中写真家・大方洋二の魚って不思議!

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特異な生態のスズメダイ

全世界で300種以上知られているスズメダイ科の魚。そのほとんどは卵の保護はするものの、ふ化と同時に終了する。稚魚が浮遊生活するからだ。ところが、たった1種だけ例外がある。スパイニークロミスで、ふ化後も一定期間両親と一緒に暮らす。

▽スパイニークロミス(GBR)

Image1-sp.jpgフィリピンからグレートバリアリーフ(GBR)にかけての熱帯域に分布するこのスズメダイを知ったのは、約20年前に出版された『魚の子育てと社会』(桑村哲生著、海鳴社刊)。グレートバリアリーフで学者が観察した記録と、子供を守っているイラストが描かれていた。海水魚では親子でいる姿を見ることができないので、いつかはぜひ撮影したいと思っていた。

▽親は憶病で一緒に撮るのは困難(メナド)
Image2-sp.jpgインドネシアのメナドを取材したとき、スパイニークロミスに出会ったが、最初は別の種かと思った。というのは、先述のイラストでは体の後部と尾ビレは白なのに、メナドのは全身が黒褐色だったからだ。また、初めのころは稚魚の姿は見えなかったことも別種と思った一因だった。
▽約1cmの稚魚を見守る両親(メナド)
Image4-sp.jpg帰る前日に親子でいるのを見つけ、スパイニークロミスの地域変異ということがわかったのだった。成魚はたいていペアで、稚魚は50〜100尾が周りで浮遊している。だが、親が子供を守る、という感じではない。近づくと親は怖がって岩の隙間に隠れてしまう。子供はちらばっていたのがまとまって隙間に近寄るだけで、隠れはしない。稚魚の大きさはペアによって異なり、全長1〜2cmの場合や4〜5cmの場合があった。
▽けっこう多いスパイニークロミス(GBR)
Image12-sp.jpgその後GBRに行ったが、スパイニークロミスは見られたものの、時季が悪かったのか、稚魚は見ることができなかった。もちろん見落としもあるに違いないが、12月は繁殖の時季ではないのかもしれない。
▽親の体をつつく稚魚(GBR)
Image15-sp.jpgGBRにはその後8月と4月に行った。8月は3〜4cmや5〜6cmの割合大きな稚魚が一緒にいた。4月は1〜2cmの小さな稚魚はほとんどだった。このことから、GBR(ケアンズ付近)での産卵は、2〜3月がピークと推測できる。また、8月のとき、稚魚が親の体をつついているのを何度か観察したが、どんな意味があるのだろうか。



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プロフィール

大方洋二
大方洋二○1942年 東京生まれ
高校時代にスノーケリングを始め、21歳にときに東亜潜水機(株)でスクーバダイビングの講習を受ける。同時に発売されたばかりのニコノスを手に入れ、独学で水中撮影を始める。
以来、会社勤めをしながら趣味として続け、39歳で退社してフリーの水中写真家になり、現在に至る。NHKの動物番組のコーディネーターも時折務める。日本自然科学写真協会会員。

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